宵山万華鏡(森見登美彦)

実は一度読み終わったものの、再読を余儀なくさせられている。恐るべし、森見登美彦祇園祭宵山の一日の六つのエピソードがタイトルの通り、万華鏡のように入り組んで、前の話の女の子がたまたまぶつかった得体の知れない大男が後の話では、ちゃんと名前付きで登場するとか、とにかくもう一度確かめたい気になってくる。乙川という妙な人物は愛嬌もあるが、怪しい。高校のとき、毎日教壇の上にふくふくと笑うお地蔵様がおかれたり、ある日男子トイレのペーパーがピンクの香りつきのものに変わっていたり、正月明けに豆粒ほどの鏡餅が各自の机におかれていたり。こういう珍事を仕掛けたのが乙川である。煙に巻かれたような小説だ。